第2章 草食なオレ

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「ああ、悪い。これ、ファンデじゃ隠れない ……ハイネックかな」 はぁ、と息を吐いた遠野さんは艶かしいにも程がある。 「オレ的には隠さないのもいーかと思うけど 社会人としてはどーかな」 じゃあ、社会人として こんなとこにツケんなよ、ってゆーのが マナーだろ。 だけど 「遠野さん、毒リンゴいつ食わされるかわっかんねーから」 だからつけたかった。 「……毒リンゴ?」 「そう、毒リンゴ」 遠野さんは一旦俯いて また、顔を上げた。 「たべたい」 恐ろしく作興(サッコウ)させられるその気配に オレとした事が息を呑んでしまう。 「新城さんの、毒リンゴ」 白く細い腕がスルスルと首の後ろに回されて 密着した身体は、温度を上げ熱を放出する。 「新城さん」 「なに?」 「……妬いてくれたんですか」 恥ずかしそうに 頬を染めながら尋ねるカオに ああ、そうか、と 確信した。 「ああ」 頷いて、頭を撫でると 目から 唇から その表情全てが綻び 愛らしい事この上なく、素晴らしい。 「遠野さん……」 「嬉しい」 素直に気持ちを言葉にして、オレに届けると ギュ、と抱きついて、頬を擦り寄せた。 オレを妬かせたかったのか。 あまりのいじらしさに その、純粋さに のたうち回るオレとヤツ。
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