第2章 草食なオレ

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彼女が引いている図面と オレが持ってきたデザインが ちょうど同じ施設のフロアのモノで 「遠野さん、僕の案です。先に見せとこうと思って…… ……だけど、必要なかったみたいですね」 オレの手から 遠野さんの手に渡るデザインを 彼女の瞳が右から左、上から下 また、その逆も然り 何度も往復する。 ほぅ、と 明らかに火照った吐息。 「新城さんのデザインは見ていて意欲を掻き立てられます お預かりしていても宜しいですか? 引き直さなくっちゃ。 もっと凄いの、思い付きました」 仕事で 特に製図の時に使う黒い縁のレンズの分厚い眼鏡を 眉間の所でク、とあげて 遠野さんは柔らかく微笑んだ。 夕べの 最高に永い時間をかけた繋がりが フツフツと脳裏に浮かび また、浮かび オレはどんだけ彼女が好きなんだと、思い知らされる。 「遠野さん」 「身体、辛くない?」 突然キュ、と結ばれた口元。 開かれた大きな目。 ひと呼吸置いてコクン、と頷き また、ひと呼吸置いてフルリ、と首を振った。 元の位置に戻った遠野さんの頬は心なしか発色していて この目の前の萌え星人を どうにかしてくれと、思わずにはいられない。 「遠野さん、あんまり会社でそんな顔してたら 知らないうちに食べさせられちゃうかもよ」 ハッと息を呑み だけど、その頬より紅い唇はまた 自然に開き、そして火照りを逃す。
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