第2章 草食なオレ

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「毒リンゴ」 ゴックン と、音が聞こえそうなほど 彼女の顕著な嚥下が、喉を通ってゆく。 オレの食べさせたソレは 一生、彼女の身体を巣食い続けるから きっと 他の毒は受け付けないだろうけどな。 「じゃあ、遠野さん、ソレ預けておきますね?」 「……あ、っ、はい、お預かりします」 「それから、そのNo.3の正面なんですけど」 「は、はいっ」 慌ててデザイン画を広げる姿も 萌え星人は魅せてくれる。 まったく、なんて女なんだ。 「ここ、一面にガラス、差し込みたいって変更ありました 図面でなんとか変えられる?」 「あ、……ここは元々壁で間仕切りだったところですね」 「うん、そうかな」 萌え星人は単純で もう、仕事に気を取られている。 うーん、と真剣に図面を見ながら 「大丈夫です、特殊な組み立てにはなっていないので ちょっと角度だけ、気をつけてみます」 そんな横顔に 少しだけ、意地悪を。 「それから」 「はい」 メモにペンを走らせ オレの方を見上げる。 純粋に次の指令を待っているその姿にも クラクラ、する。 「挿し込みたいモノがもうひとつあるんですが」 「はい」 ………………………… ……………………………… 見つめ合うだけで 周りの空気の流れまでもが止まり この世界に たった二人だけしかいないような錯覚。 「今は時間がないので」 「……あっ」 「無理ですが」 萌え星人が、また、戻ってきた。
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