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「木本さん、顔をあげてください
僕は何も気にしていませんから」
気にもしねーから帰ってくれ。
顔をあげた木本さんは
心なしか瞳を潤ませて
鞄をゴソゴソと探ると封筒を取り出す。
「ほんとに……何て御詫びしたらいいのかっ
これ、諸々の代金です!
夕べはこっちがお誘いしたのにあんな、あんな事になっちゃて、私、申し訳なくって……」
よえーのに無理して飲んでんじゃねーょ。
「いえ、お気になさらず」
「そんな訳にはいきませんっ」
「木本さん、かえってお気遣いさせてしまって申し訳ありませんでした。
ですが、あの場合の最善策だったと思っています。
本当に気にしていませんので、収めてください」
突き付けられた封筒を
やんわりと押し返す。
「それから昨日のお話なんですが……
僕には荷が重いような気がします。
それに、この会社でまだまだしなければならない事が山積みで……
お誘い頂いた事は大変有難いのですが
ここを辞める気はありません。
とても優越した気分になれました、有り難うございます」
オレはそう言って木本さんに微笑んだ。
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