第2章 草食なオレ

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オレがココを辞める訳がネェ。 遠野さんがいるのに 考えられない。 「はー……、」 木本さんの 落胆したその顔が、オレのある部分を擽った。 間の抜けた 緩みきった表情。 自信のあるヤツほど 手にしたいものをそう出来なかった時に見せるその喪心ぶりが堪らない。 「そっかぁ」 「はい、もったいないお誘いでした」 「あー、そっか」 うんうん、と 頷いて自分に事実を言い聞かせる木本さんは 暫くその場で放心した。 「けどね、新城さん」 「何でしょうか」 「年明けから始まる企画でどうしても貴方の力を借りたいの ……きっと、キミも、飛び付くと思うんだけど……」 急に 真反対の顔を見せてきた木本さんは 物凄く、挑みかかってくるような視線を オレに飛ばす。 「…………まぁ、いいか でも、新城さん、今回は本当に申し訳ありませんでした。 やっぱりこれは、受け取ってください。 と、いうか、お返しします」 この女…… 考えが読めない。 「益々、新城さんと仕事したくなったなぁ。 でも貴方はきっと、私と組む事になるわ」 180度、うって変わった自信に溢れたその仕種が 今度はオレの中で 嫌悪に変わる。 お互いの呼吸も聞こえないくらいの 静かな部屋で 木本さんはオレを見上げて その態度を満々に現して微笑んだ。 マジで、うぜぇ。 「新城さんの隠れた爪、見られるように頑張るわ」 「そんなのありませんよ」 ケラケラと軽く流して見た先に 「……そうかなぁ」 訝しげに返す木本さんが肩を竦めていた。
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