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あんなに神妙な顔つきで押し掛けてきた
厄介な得たいの知れない女、木本さんは
これからオレをオトスのが楽しみだ、と言いながら
ちゃっかりここに来た目的を果たしていた。
無理やりポケットに突っ込まれた封筒と
彼女の名刺。
裏にはプライベートナンバーが
流れるような字で記してあった。
ふーん
なんか、厄介な事になってきたなぁ。
受付で木本さんを見送ると
後ろから声をかけてきたのは神田課長。
「おい、新城、アレ、木本デザインの女社長じゃん」
「ああ、神田課長、お疲れ様ですー」
気の抜けた声に
ズルリ、と見事にオチを見せてくれる課長。
「新城、お前といると、たまーにやる気を根刮がれるわ」
「あはは、スイマセン」
「いや、それより、なんで」
課長は玄関とオレを交互に指差しながら
今し方別れたばかりの木本さんを気にしていた。
「たまたま知り合う機会があって、わざわざ寄ってくださったんですよ
お茶も出すの、忘れてました。アハハハハ」
「へー、あの木本社長がねー」
顎を撫でながら課長は呟く。
「気ィつけろよ?新城」
「は?」
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