第2章 草食なオレ

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エレベーターの中で あらぬ疑いをかけられ、しかも それについて触れずにいたオレ。 オフィスに入るまでも微妙な距離を保たれて 笑いを堪えるのに、必死。 「神田課長……お腹、捩れます……」 まぁ、ソッチ系だか、アッチ系だかの噂がたつのもイイだろう。 めんどくさいオンナが寄ってこなくて済む。 課長はスピーカータイプじゃないが その相手がスピーカーだしな。 広がるのも時間の問題か。 「凄いじゃない!遠野さんっ!」 それは、そのスピーカーからの拡声。 オレの身体は‘遠野さん’というフレーズに 確実に張り切って反応する。 だから、すぐに詮索したがる。 何が、凄いんだ……。 スピーカー雨宮さんが 遠野さんの周りをクルクルと移動しながら 彼女の顔を覗き込む様子が、ちょっと不気味。 「なんだ、随分楽しそうだな」 遠野さんは丸めた図面をチューブに入れながら 最大に困った顔をして、雨宮さんに苦笑いを浮かべた。 「あ、課長!聞いてくださいよ!」 スピーカーの命名は間違ってないな、と確認しつつ 奥の席で、三木部長がため息ををつきながら 首を振った。 ふーん。 なんだか、如何わしい事になってるのか? オレは素知らぬ顔で 自分の席についた。
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