第2章 草食なオレ

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「新城さんて、随分イメージとかけ離れたデザインするのね?」 木本さんの くどくないグロスを引いた唇が 間接照明の灯りをしっとりと取り込んでいる。 キラリ、と反照したのはソコだけではないようだ。 「とても熱くて、鋭いデザインするのに ……まぁ、能ある鷹はなんとやら、って言うからね」 木本さんの目はオレの奥深くを覗いているかのようで なんとなく、イケスカナイ。 「あぁ、京都の‘葵’あなたが手掛けたんだって? あんなプランニングも出来るんだったわね」 ……出方を試されている。 ハッキリとそう感じた。 オレの隣には息を潜めた雨宮さん 二人の攻防の行方を ジッと静かに聞いている。 「最近は多種多様にさせて頂いていて ひとつひとつ、楽しみながら創らせてもらっています」 オレは 彼女の多少棘のある物言いを無かったかの如く にこり、と微笑んだ。 「うん、いいわね」 遠野さんより少し長い睫毛を パチパチと上下させ 隣の雨宮さんに視線を投げる。 「新城くん、ハッキリ言うわ。 あなた、ウチの事務所に来ない?」 ……思った通りか。 シン、とした空間に オレを食い入るような眼差しを前から、横から感じながら めんどくせぇ 頭の中でコメントを残した。
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