第2章 草食なオレ

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「はい」 顔を いつもの優男にシフトして あぁ、さっき彼女に暴言吐いたんだっけ…… ま、それはやっぱり無かった事にして 「3番にお電話です」 「分かりました。どちら様?」 「あ、えっと 木本デザイン事務所の木本さんだと……」 とうとう名前出して絡んで来やがった。 「木本さん、……」 オレは少しだけ考える。 ありがとう、さっきの詫びも兼ね 満面の笑みを返し オレは‘3’を躊躇なく押した。 「お待たせ致しました、新城です」 『先程はどうもお騒がせ致しました』 「いえ、わざわざお気遣い頂き、恐縮です」 『その様子ですと、ご覧になったかと思いますが』 「……誰の目にも触れる可能性のある手段は、どうかと思われますが、いったいどういったご用件でしょうか」 お互いが 静かに、淡々と紡ぐ言葉の端々に それとなく なんとなく 棘がある。 ソレに毒がナイかを確かめる。 『もちろん、貴方をソコから引っ張り出す為』 「ですから、それはお断りさせて頂きます そう、申し伝えた筈ですが? 木本さんともあろう方が、たかだかどこぞの小僧に 何をお考えでしょうか」 『……いずれ 貴方は、ソコを出なければいけなくなり そして、わたしと組むことになるわ』 やけに自信たっぷりに言いやがる。 なにか、もう、ばら蒔かれたのかも、しれない。 どうして、オレなんだ。 「では、僕は仕事に戻ります」 『またね、新城さん』 電話口でフフ、と笑う吐息が まさか、直接かかった訳ではないのに 妙な気持ち悪さを覚えた。
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