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部長の目は少なからず訝しげに光り
それは
遠野さんとの質疑応答を邪魔された事によるものなのか
オレがこうして何かを直々に伝えにくる事が珍しいのか
その光は直ぐにオレの右手に握られた紙の束に落とされた。
「急ぎか」
三木部長の不思議な声色が
オレの耳を擽る。
そういう趣味は持ち合わせてなかったが
この声だけで
アホな女は確実に部長に好意を覚えるだろう。
「まぁ、出来ましたら早急にお願いします」
ヘラリ、と笑って右手を軽く振った。
そこで初めて遠野さんがオレに視線を向ける。
「遠野さん、話中だったのにごめんね」
ほぼ、抑揚のナイ、棒読みのセリフを投げつけて
オレはまた、三木部長に向き直った。
「遠野、昼からにするか。
それまでに直し入れるとこ、あげといてくれ」
広げられた図面は
ベイエリアの商業区のモノで
正に、渦中のなんとやら。
「あ、遠野さん、申し訳ナイけど
ソレに関してのオレのデザイン、一切破棄で」
シレ、っと言ってのけると
三木部長の訝しげな光に、更に不明朗さが乗っかった。
遠野さんは、何故か反応も薄く、こちらを見ていて。
やっぱり浮かび上がるのは
違和感。
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