第2章 草食なオレ

35/36

554人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
部長の目は少なからず訝しげに光り それは 遠野さんとの質疑応答を邪魔された事によるものなのか オレがこうして何かを直々に伝えにくる事が珍しいのか その光は直ぐにオレの右手に握られた紙の束に落とされた。 「急ぎか」 三木部長の不思議な声色が オレの耳を擽る。 そういう趣味は持ち合わせてなかったが この声だけで アホな女は確実に部長に好意を覚えるだろう。 「まぁ、出来ましたら早急にお願いします」 ヘラリ、と笑って右手を軽く振った。 そこで初めて遠野さんがオレに視線を向ける。 「遠野さん、話中だったのにごめんね」 ほぼ、抑揚のナイ、棒読みのセリフを投げつけて オレはまた、三木部長に向き直った。 「遠野、昼からにするか。 それまでに直し入れるとこ、あげといてくれ」 広げられた図面は ベイエリアの商業区のモノで 正に、渦中のなんとやら。 「あ、遠野さん、申し訳ナイけど ソレに関してのオレのデザイン、一切破棄で」 シレ、っと言ってのけると 三木部長の訝しげな光に、更に不明朗さが乗っかった。 遠野さんは、何故か反応も薄く、こちらを見ていて。 やっぱり浮かび上がるのは 違和感。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

554人が本棚に入れています
本棚に追加