第2章 草食なオレ

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「三木部長、よければ遠野さんも一緒に」 オレは遠慮がちに微笑みながら二人を交互に見た。 遠野さん 何か知ってるなら 教えてくれ。 「分かった。奥に行こうか」 席を立ち、図面を抱えて後付けのパーテーションで 区切られたソコに3人で入る。 三木部長は部屋の奥に陣取ってオレを待った。 「あー、貴重なお時間すいません。 ですが、もう知れ渡るのも時間の問題かと」 オレは紙の束をやっと解放して 部長の目の前に並べる。 遠野さんの握っていたペンがカラカラと床に転がり 部長は一瞬だけ ソレを目で追った。 暫くの沈黙はその紙の束を隈無く探っているから。 「遠野さん、何か心当たりある?」 オレは 拾いあげたペンを渡しながら 遠野さんに尋ねてみる。 フルフルと左右に首を振る遠野さんは ありがとうございます、と、小さな呟きと共に ペンを受け取った。 「……やられたな」 三木部長は特に悔しがる風でもなく 慌てる風でもなく、それとなしに言う。 「残念ですが……まぁ、また、パターン変えて やってみましょうか」 オレもアハハと軽く笑いながら ソファに凭れかかった。 「もう相手は今日から着工してますから、どうしようもないですしね」 「だな」 「で、どうしますか」 三木部長がオレを真っ直ぐ見て んー、と口を一文字に結んだ。 「分かりました、みんな、呼びますね」 オレはまた、笑いながらクルリと向きを変えて ソコを出た。
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