第2章 草食なオレ

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木質。 木質建築のデザインコンテストの事で 「木」に拘った建築作品を競い合うもの。 最優秀賞を受賞した木本さんの作品は 見事な環境配慮型の平屋建て公共施設だった。 全てが庭に面している何処までも開放感ある造りは見事。 だけど彼女は 「新城さんの‘公園のオアシス’が最優秀だったかも しれないって聞いて あぁ、なるほど、って思っちゃった」 オレを真っ直ぐに見て、弱々しく笑う。 さっきの意味深な笑いはどこへいったんだ。 「この人と組みたい、そう思ったわ」 ワインが 彼女の身体の中に吸い込まれるように入っていく。 ‘公園のオアシス’はオレが応募したモノ。 夏は、覆い被さる木々の繁った緑と共に灼熱の光を遮り 冬は、次に芽吹くために緑を落とした強い息吹の隙間から暖を呼び込むように 緩やかに懸垂型を模した天井を杉の木で組んだ 公共施設、公園の中の休み処だ。 入賞を果たしたモノではあるが ただ、それだけ。 ランドスケープとしてはとてもイイ仕上がりだった。 オレも気にいっている。 「あそこでボーッとしてると、創作意欲が湧いてくるわ」 ワインボトルを既に逆さまにしながら うっとりと語るその姿は、艶やかだといえた。
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