第2章 草食なオレ

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「…………」 コイツ、酒、よえーの? 飲みはじめて、1時間ぐらいだろ 「あ、の、木本さん?」 どうみても テーブルに突っ伏している木本さんは 右手にワインボトルを握ったまま軽い寝息をたてていた。 厄介 以外のナニモンでもないだろ。 チッという舌打ちと ハァというため息を 頭の中でスラコメして もう一度木本さんに声をかけた。 そして身体を揺する。 瞼の下の 眼球さえ動く気配はない。 仕方なく、スマホを取り出して指をスライドさせた。 よく、物語なんかであるだろ? 酔っぱらって寝てる女の家が分からないからと 自分の部屋へ連れてくってヤツ。 オレは、無理。 ぜってー、そんな真似はしない。 スマホを仕舞い、店員を呼んでチェックを済ませる為に カードを手渡した。 ……未だにワインボトルを離さない姿は 滑稽を通り越して、不憫。 オレの趣味ではないし オレの嗜好でもないし 放って帰ってしまう事が寧ろオレの‘癖’を擽る。 「ありがとうございました」 「ご馳走さま、タクシー手配してもらってもいいかな」 綺麗に化粧をした女性スタッフに 優しく微笑んで 「あ、はぃ すぐに来ると思います」 彼女の声が上ずったのを確認してから 「ありがとう。お願いします」 また、微笑んだ。 女は何時だって オレの外面しか見ようとしねぇ。
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