第2章 草食なオレ

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勝手知ったる遠野さんのマンションに 100%勝手に潜り込むのはもういつもの事だ。 カチャリと部屋のドアを開けると まだ、灯りが点いている。 まぁ、当たり前か 木本さんが予想外の展開に流れてくれたお陰で 門限までまだ猶予がたっぷり残っていた。 1LDKの彼女の城は恐ろしく殺風景だ。 最低限の必需品のみ揃えられたこの部屋は 現代のお姫様にはどうも不相応で 無機質過ぎるここにオレがやっと色を添えたただ、ひとつ 異質なケース。 リビングに入るとそれが一番目についた。 扉の開いた音に反応して彼女が顔をあげる。 どうやら仕事を持ち込んでいたらしい。 「こんばんは、遠野さん」 「こんばんは、新城さん」 挨拶を交わし 「続けて」 オレはノートパソコンと向き合う彼女に どうぞ、と促した。 「はい」 フワ、と微笑んだ遠野さんは 家仕様の青い縁の眼鏡をキュ、とあげながら また、パソコンに向かった。 ふーん、いつもと変わらず 可愛いじゃねーか。 フイ、と回転して緩んだ顔を見せないように また、100%勝手に奥の部屋へと向かう。 ここは、彼女が詰まった部屋だ。 幻想的な色の間接照明。 白みかかった青と オレンジかかった赤が なんとも言えない雰囲気を出し 混ざり合う天井で 不思議な気持ちにさせる紫を創る。
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