434人が本棚に入れています
本棚に追加
「チッ」
仰々しいほどの舌打ち。
「……せ、先輩と遠野さんの、ご、ご関係はっ」
もう、限界。
我慢をしながらだったが
これだけで精一杯なオレは勢いよく言い放った。
少しの沈黙。
きっと、この間に全てのおかしな雰囲気をフラットにしたんだと思う。
「オレが中2の頃からずっと一緒に住んでたよ。
大学を卒業するまで、かな」
「は?」
ちょっと待て、最近よく、あるパターンかよ。
あの義理の兄とか、どうこうとか?
乱れ○華、とか、姉貴ノ○那とかのパターン?
「先輩、ちょっとした禁断ですか」
「アホか、ちげぇよ」
まあ、聞けよ。と、言って
凄く聞いてほしかったんだろうな、と思わせるような
専務の面倒くさいというか、お茶目な性格を少しだけ
微笑ましく思った。
「遠野ちゃんはオレの親父の妹の娘ちゃん、つまりオレとは従妹だよ」
「……ま、マジですか!似てない……」
「あら、結構似てるのよ?」
また、ややこしさを振り撒きながら続ける。
「叔母さんと旦那さんはちょっとした訳アリで
遠野ちゃんが産まれた直ぐに亡くなったの。
で、兄ちゃん、つまりオレの親父とまぁ、実家暮らしだった。
だから、オレは遠野ちゃんが産まれた時から一緒にいる訳だ」
「イトコ、4親等か、近々しいな」
「まあ、遠野ちゃんはオレが育てたようなもんだからな。
だから、オレは彼女の親父替わり、ヴァージンロードだってオレが歩くんだぜ」
やけに、偉そうに言う専務の鼻の穴が膨らむ。
「だから、ジョー
遠野ちゃんとどーにかなりたかったらお前はオレに許しを乞わなくてはならない」
妖しい関係ではなかったが
じゅうぶん怪しいオッサンである事には間違いないな、こりゃ。
車の中の雰囲気が目まぐるしく変わる。
変態だったり、オッサンだったり
ちょっと険悪だったり、和んだり
まぁ、全部このオッサンの所為なんだけども。
最初のコメントを投稿しよう!