第6章 狡くて賢い女の罠ワナわな(笑)

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「チッ」 仰々しいほどの舌打ち。 「……せ、先輩と遠野さんの、ご、ご関係はっ」 もう、限界。 我慢をしながらだったが これだけで精一杯なオレは勢いよく言い放った。 少しの沈黙。 きっと、この間に全てのおかしな雰囲気をフラットにしたんだと思う。 「オレが中2の頃からずっと一緒に住んでたよ。 大学を卒業するまで、かな」 「は?」 ちょっと待て、最近よく、あるパターンかよ。 あの義理の兄とか、どうこうとか? 乱れ○華、とか、姉貴ノ○那とかのパターン? 「先輩、ちょっとした禁断ですか」 「アホか、ちげぇよ」 まあ、聞けよ。と、言って 凄く聞いてほしかったんだろうな、と思わせるような 専務の面倒くさいというか、お茶目な性格を少しだけ 微笑ましく思った。 「遠野ちゃんはオレの親父の妹の娘ちゃん、つまりオレとは従妹だよ」 「……ま、マジですか!似てない……」 「あら、結構似てるのよ?」 また、ややこしさを振り撒きながら続ける。 「叔母さんと旦那さんはちょっとした訳アリで 遠野ちゃんが産まれた直ぐに亡くなったの。 で、兄ちゃん、つまりオレの親父とまぁ、実家暮らしだった。 だから、オレは遠野ちゃんが産まれた時から一緒にいる訳だ」 「イトコ、4親等か、近々しいな」 「まあ、遠野ちゃんはオレが育てたようなもんだからな。 だから、オレは彼女の親父替わり、ヴァージンロードだってオレが歩くんだぜ」 やけに、偉そうに言う専務の鼻の穴が膨らむ。 「だから、ジョー 遠野ちゃんとどーにかなりたかったらお前はオレに許しを乞わなくてはならない」 妖しい関係ではなかったが じゅうぶん怪しいオッサンである事には間違いないな、こりゃ。 車の中の雰囲気が目まぐるしく変わる。 変態だったり、オッサンだったり ちょっと険悪だったり、和んだり まぁ、全部このオッサンの所為なんだけども。
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