434人が本棚に入れています
本棚に追加
「有り難うございました」
ちゃんと送り届けてもらったのは家の前。
オレのマンションを知ってたんだな、と思うと気味が悪い。
「連れ回して悪かったな」
「いえ、キョーチャンにも会えて楽しかったですよ?」
ニッコリと笑った後、頭を下げた。
「遠野さんに伝言は?」
「は?」
「今からオレらはラブタイムなんで」
唇を緩ませて
「電話されても出られませんからね?お伝えする事があれば、どうぞ?二ノ宮センム」
「テメェ、わざと煽りやがって……」
笑う。
「では、また、明日」
車から下りて、パタリとドアを閉め手を振ると
また、静かに窓が開いて地響きが聞こえる。
「……あんまり無茶な事して壊すんじゃねぇぞ、ジョー」
ああ、面白い。
専務の多彩な芸が見られた事にまぁ、ヨシとして
ゆっくりと走る去るそのボディを見つめた。
「さて、濡れて飛べなくなってるかな?」
専務との絡みをどう、遠野さんに伝えようかと
そればかりを考えながらエレベーターに乗り込む。
途端に無機質な匂い。
だけど、頭の中での想像から遠野さんの匂いに変換されて
オレの身体は既に思春期の中学生バリに跳ね上がった。
「あぁ、オレって変態」
息を鼻から吸いながら、満足する。
誰も乗り合わせてなくて良かった。
エレベーターの扉が開いてオレを送り出す。
気忙しく歩き、徐にチャイムを押すと
少しの間の後、ドアレバーがスゥと下がりソコが開かれた。
最初のコメントを投稿しよう!