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バカ親子が帰った部屋で3人、少しの間沈黙が続く。
「遠野さん、有り難う」
オレは肩の力が抜けきった彼女に微笑んだ。
「新城さん……」
ふにゃり、というのが当てはまる。
もう使い果たしたんだろう、と思われる安堵の笑み。
見つめ合っていたオレと遠野さんに割り込んできたのは
ちょっとした、遠野さんの昔の過ちのオトコ。
オレはこう見えても嫉妬深くてね。
「新城、説明しろ」
「何をですか」
「しらばっくれるな
相手は代議士だろう、あんな風に下手に出る訳がない」
ホントに、声だけは無駄に渋いね、部長。
声優とか、いけんじゃね?
振り向いて部長に微笑む。
「イイ代議士先生なんじゃないですか?
市民に寄り添い街の政治を執行す」
「新城」
ギュ、と眉間に籠められた訝しさと何度か下がった声のトーン。
オレはお手上げ、を見せて
「何にもしてません、僕は」
「どういう意味だ」
「ただ、向こうが気付いただけじゃないですか?」
ニヤリ、と笑った唇に視線が向けられたのが分かった。
「悪い事を、したんだな、と」
ただそう言っただけ。
実際にそうなんだ。
オレは本当に何もしちゃいない。
だから早く気付けばいいよ、木本さんも
その仲間も。
部長はそれ以上何も言わなかった。
ひょっとしたら、言えなかったのかもしれないけど。
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