第8章 オレの素性?

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「さて、これでひとつ、片付いた」 部屋を出る時の呟きは、呟きにしては大きく かといって誰かに話しかけたワケではないほど大きくない。 だけど二人には確実に耳に届いた筈。 遠野さんは何も言わずに 両手をギュウと前で結んでいて 三木部長はもう視線さえもくれない。 オフィスに戻ると心配そうに駆け寄ってきたのは 雨宮さん。 「遠野ちゃん!大丈夫だった!?」 ナデナデと、遠野さんの頭を捏ねくりまわす雨宮さんに チラリと黒目だけを向ける。 「あ、新城くん、妬いた?」 クフフと含み笑いを溢した雨宮さんは わざとらしくオレに向けて遠野さんを撫で回す。 いい迷惑だ。 「妬きませんよ」 「えー!」 バカ、かあんたは。 「あの、あめみ」 「ほら、嫌がってますよ、雨宮さん 遠野さんを解放してあげてください」 「だってぇ」 そう言って年がいもなくほっぺたをぷう、と膨らまし 「新城くんを困らせてみたいんだもーん」 「充分困りましたよ」 あんたの年考えないその顔に。 「あ、そうだ、新城くん 木本さんから電話があったわよ?折り返し連絡 ほしいって……」 ちょっとだけ神妙な雰囲気になってしまったので オレは大丈夫ですよ、の意味を込めて 「ありがとうございます」 ニコリ、と微笑んだ。
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