第9章 オレの素性②

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「専務の部屋のレコーダーはどうなりました?」 「まだそのまんま」 「目星がついた、って言ってましたよね?」 「あー」 専務が空き缶をダストボックスに入れ オレを振り返った。 「なんで専務だったんですかねぇ」 「……さぁな」 「なんで専務の部屋だけだったんですか」 「んなこた知らないよ」 ここの駐車場、結構出入りが激しいんだな、と そう思ったのはひっきりなしに続く キュ、キュ、というタイヤの擦れる音を聞いている所為。 「ジョー、お前、遠野ちゃんとどうするつもり?」 「は?」 また、いきなりかよ…… おにいちゃんは、心配で堪らないっての? 「お前ん家のバックが大きな組織だってのは知ってんの?」 「まだ伝えてません」 「……結婚は両性の合意、だけとか思ってる訳じゃ ないだろうね、新城くん」 軽く笑うと、思いっきり睨み返された。 「お前さ、嫁ぐ側にもそれなりの覚悟、あんだろ しかも嫁がせる側ならそれはそれは計り知れない程 膨大な心配があるわけよ」 「遠野さんを嫁がせてくれるんですね?」 「嫁がせねーよ、バカ」 焙煎ブラックを大きく飲み干した。 オレも立ち上がり空の缶をダストボックスに押し入れる。 二人の男は小さい方ではない。 だからこのこじんまりとした休憩所は 少しだけ窮屈に感じる。 「今はとにかく、仕事が捗(ハカド)るように 面倒な事を片付けます」 「で?」 「遠野さんを側に置いたのは…… 彼女の安全も考えての事です」 それだけじゃないですけど…… そんな風に付け加えて。
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