第9章 オレの素性②

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明日、木本さんと会ってくる そう告げた後、表情を一気に曇らせたキミは オレの全てを煽り そして 「……分かりました」 いつもと変わらない声で微笑んだ。 「思いっきり、イヤダ、って思ったでしょ」 まだ少しだけ湿った髪を撫でると フルフルと首を振った後、コクリと頷いた遠野さんは 「ヤダ……」 ポツリ、と溢す。 「そっか、イヤダよね オレも遠野さんがどっかの誰かとそうなるとイヤダ」 頭を撫でた手をとって 自分の頬に持ってきた遠野さんは オレの掌に柔らかな少しだけ上気したソレを預けて 目を瞑る。 「でも、仕方ないって、分かってるんです」 あんまりカワイイ事してると もうヤバい事になりそうなんだけど。 最近忙しくて、帰る時間もバラバラで あんまり気を遣ってあげられないような毎日で 「遠野さん」 「はい」 「スカイツリー」 「え?」 パチパチと瞬きをして、不思議そうにオレを見上げた遠野さんに、ニコ、と微笑み返した。 「スカイツリー?」 首を傾げて同時に揺れる大きな瞳 そして、頬に沿った掌は今度は遠野さんを掴み 下へ下へと滑ってゆく。 「……ァ」 小さな声に一層煽られ、スカイツリーはその全長を伸ばし そしてより硬質に変化した。 「ここに」 オレ達の周りの空気の色が変わる瞬間。
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