第9章 オレの素性②

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「オレ、マジで腑抜けだな……」 気持ち良さそうに寝息を立てる 遠野さんの形のいい頭を撫でながら きっと微妙に力の抜けた顔で半笑いしている 自分を想像する。 おかしくて堪んねぇ。 可愛い過ぎてヤバいのは前々からで 最近じゃ、片時も離したくないと 心底思うようになって 「ダメだ、束縛男は嫌われる……」 半笑いの微妙なまま呟いて、布団から抜け出した。 「さみ……」 シャワーを捻り、湯気で充満したその空気を吸い込み 喉を湿らせる。 加湿器、付けてたかな、と呟いて 頭から滴り落ちる少し熱い湯で、身体を洗った。 遠野さんに狂っていく今までの男、とやらの気持ちが 少しだけ分かるような気がした。 自分のモノにしている筈なのにもっと取り込みたくなって 過激になる行為。 そして、度が過ぎたそれは際限なく繰り返され 収拾のつかないところまで進み それを不安がる彼女に対して産まれるのは 「……妬心、か」 パネルヒーターのスイッチを入れて 冷たい空気を暖める。 最初だけ、ジィ、と中の大事ななにかが震える音が響いた。 さて、明日のために予習でもしとくか。 ノートパソコンに軽く触れて 青く光るその画面を見つめた。
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