第9章 オレの素性②

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木本さんはいつもいつも自信を持ってオレを誘った。 彼女はオレが八雲の息子だと知っていた。 だけど、どうやって辿り着いたんだろう。 八雲はこの会社の先駆者で若い頃はたった数人で会社を切り盛りしていたという。 その先駆け時代に知り合ったのが 木本さんの母親か。 その数年後に八雲は国を挙げての イベントプロデュースを成功させて 設計とデザインの世界に成り上がる。 YAKUMOのシステムキッチンの設計は今では老舗ブランドとして世界中で愛用されている。 日本が誇る粋の粋を詰め込んだ逸品だと評価されている。 だが、本職は今はそれじゃない。 あくまでも、デザインから組み立てまでを 各々に合わせてプロデュース作業するのが主だ。 だからデザイナーと建築士、そして営業でいくつかのチーム編成がされて個々のパターンで動いている。 会社の中でもうちのチームは精鋭揃いだった。 どこの世界でもついてくるのは ヒガミとソネミ。 称えられる陰にはたくさんのそれがある。 堺のファイルは事細かに分類されていて 例えば、八雲と木本さんの出会いの詳細までが記されていた。 オレは何も言っちゃいない。 助けてほしい、とも、こんな事になってる、とも。 だけど、これがうちの家、なんだ。
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