第9章 オレの素性②

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あれ、お目覚め? お姫様。 真っ先に覗いたのは、深紅のペディキュアが施された足。 そして、ちょっと爪より明るい赤のヒラヒラ。 なんだ、まだオレを煽るのか? 「新城さん」 「どうしたの?」 「……起きちゃいました」 「珍しいね、疲れたでしょ?」 「お仕事、ですか?」 律儀に扉の前から動かずにお伺いを立てる彼女を なんともいとおしく感じて、首を振る。 「ちょうどよかった」 おいでおいで、と招いて 「眠くなるように、ちょっとだけお話してあげるよ」 首を傾げる素振りも寝起きのせいか いつもより辿々しい感じが百倍で 近づいてくる遠野さんを早く捕獲したくて 堪らない衝動にかられる。 「……」 腕を取って引き、そして右腕に抱く。 左手はマウスを操作して今出ている画面を閉じた。 「新城さんて」 「うん」 「何してるヒトなんでしょう」 なんとなくの疑問だったんだと思う。 だけどそれはオレにしてみたら、ツボで 可愛いわ、面白いわ、ヤバいくらいに愉快。 密かに笑うオレを尻目に 彼女の視線は黒いファイルの開かれたページへ注がれている。
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