第9章 オレの素性②

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辿り着いたのは休憩スペース。 とは言っても自販機とベンチが一つあるだけの 簡単な造り。 ガコン、と音が2度続いて専務が目の前で差し出したのは缶コーヒー。 「ありがとうございます」 受け取って、専務の隣に並んで座るとすぐ話の続きが始まる。 「なぁ、ジョー」 「はい」 オレに手渡されたコーヒーは 焙煎ブラックだった。 ひとくち啜ると、缶コーヒーにしては まあまあコクのあるそれ。 「お前、ナニモン?」 「は?」 「正確には、お前の母ちゃんナニモン?」 「なんですか、それ」 専務の言いたい事はよくわかった。 多分、粗方の予想はついているんだろうが…… あえてオレに聞く? 地下フロアは駐車場になっていて 床がタイヤと擦れる甲高い音が キュ、キュ、と短く鳴く。 「ナニモンも何も、ただちょっとした家なだけです」 「ただ、ちょっとした、ねぇ?」 訝しげに黒目だけをこっちに向けて 「その、ちょっとした家の坊っちゃんが なーんで、こんなとこにいんの?」 「じゃ、専務、オレにも教えてくださいよ」 たかだか缶コーヒーの苦味に顔を歪めたのか 険しい皺が刻まれたのは、専務の眉間。 「なにをだ」 「専務、木本さんとどういう関係ですか」
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