第9章 オレの素性②

4/36

373人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
専務。 教えてください。 貴方が何を企んでいるのか。 「専務……、木本さんとお知り合いなんですよね?」 「……ちょっとした家の坊っちゃんには分かってんだろが」 「いえ、オレがそう思ったのはこの前専務の車に 乗った時です」 「あ?」 隣で缶を煽った専務の顔が少しだけ歪んだ。 「吸い殻」 「すいがら?」 「珍しいタバコなんですよね、アレ。 専務の車に残ってたの」 そこまで言って、あぁ、と思い付いたように言う。 なかなか周りのスモーキングマンにいないような種類のタバコ。 「調べたらオランダのタバコらしいですね? 黒い巻き紙に、金のフィルター…… 初めてみたのは、木本さんが酔っぱらって泥酔した日 彼女のバッグの中かな。 まあ、チラッとパッケージだけが見えただけでしたから ああ、こんなタバコもあるんだ、程度で気にも止めませんでしたけど」 「だから?」 「だから 木本さんと専務の繋がりがしっくりこなくて」 「どうして?」 「木本さんが、うちの会社を恨んでいるからでしょうか」 沈黙は最大の肯定。 とは、よくいったものだ。 「まさか、専務が木本さんの片棒担いでるとは 思っていないので……」 男と男の視線が絡むのは 案外、画になるもんなんだな、と思ったのは この時が初めてだった。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

373人が本棚に入れています
本棚に追加