第11章

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大事に掬い上げてマットの上に運び メガネをスルリと外すと 長い睫毛がユルリと揺れる。 そのまま、眠ってて。 祈るように漆黒の闇に映えた艶のある髪をヒト房 軽く握りしめ、そこに唇を寄せた。 キミが眠っている間に オレはやらなければいけない事が山ほどあるんだ。 部屋を出てPCをスタートさせる。 あれから、ずっとチェックしていた。 オレの相棒に誰かが愛撫している形跡がある。 ‘i miss u, honey……’ 画面に浮かび上がる文字。 「今日の機嫌はどう?」 カタカタと打ち鳴らすのは この中でしか通用しない言語。 初めてだった この瞬間に同じところに出くわしたのは 「へぇ」 うまく隠れながら端から引っ掛け 次に跳び移り、ハッキングをかけていく手法。 単なるやんちゃなスクリプトじゃないんだな。 そこまでしてメインを乗っ取りたい意味は何だ。 そして自分のログを消すこともなく去っていきやがる。 ……どんな意味があるんだろうか。 「乱暴なヤツだな…… そんなんじゃイケないっつーの」 大したレベルじゃないのか それともわざとらしく振る舞っているのか どっちかと言われれば、後者だと思うが…… だけどそう簡単に貫通は出来ないようにしてあんだよ? 「なぁ?相棒……」 英数字の羅列が物凄い勢いで画面を行き来する。 そしてそのうち‘ピー’と甲高い音が鳴り響き 画面がピンクに染まる。 ‘Thank u so much,Master.i love you……’ オレは画面をひと撫でして 寝室へ続く扉を見つめた。 「あー……ヤりてー」 溜め息と共に吐いたのは 衝撃的セリフ。
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