第11章

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遠野さんの心臓の音が少しずつ速くなっていく。 優しく、柔らかなその生命の声 「たまに、いつもとは違う口調で呟いてて」 「私、あの時からずっと 新城さんが好きでした」 「知らない人、みたいだった…… キュンキュンするって、ああいうのなんだなぁって」 「それから…… 新城さんを気にするようになって たまに、知らない新城さんが出てきたりして その度に、やっぱりキュンキュンしました」 フフ、と笑ったのは思い出し笑いなんだろうか。 オレの意識の3分の2はもうシャットダウンされている。 「……新城さん、すき」 うん、オレも それが、彼女に届いたかは分からない。 だけど、こんなに穏やかに過ごせるなら ずっとこのままがイイ。 どんなに疲れていても 目覚める時間はほぼ同じで 部屋の中はまだ暗く 腕に囲った可愛いキミの寝息が 堪らなく愛しい瞬間。 ……いつの間にか立場は逆転したんだな、と 夕べの出来事にちょっとした恥ずかしさを覚えた。 遠野さん キミに出会えた事はオレの中では奇跡に近いんだ それは、またキミにそのうち伝えるよ。 「もうちょっと、寝ようかな……」 遠野さんを抱き寄せて目を閉じる 起きたら、今度こそ続きをしようと、心に決めて。
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