第11章

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遠野さんの製図室は一番奥。 もちろん、遠野さんは今までオレと同じフロアにいたので そこに灯りは着いてはいない。 四賀の部屋はその一つ手前。 岡田さん仰せの通りまだ主はいらっしゃるようだ。 ノックをしようと扉の前で軽く拳を握る。 だけど先客がいるらしい事にその手を下ろした。 中から聞こえる話し声は多分四賀のものだ。 出直すか、と一息ついて 90度向きを変える。 いや、待てよ。 誰がいても構わないか。 オレが来た、という事だけ分からせておけば。 再度上げた拳で扉をノックすると 考える、にしては少し長い間の後 「はい」 と、返されたところへ、オレは滑り込んだ。 あ、れ。 そこには誰の姿も見えない。 あぁ、電話か、と四賀のすぐそばに置かれたスマホを 視界に捉えた。
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