第11章

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「遠野さん」 小さな嗚咽で肩を揺らす オレよりも小さな彼女を抱き締めるのは簡単な筈なのに 手が出せないでいる。 何度拭っても、零れてくる涙に いったいどんな意味があるんだろう。 「遠野さん…… 明日、覚えてる? こないだ、約束したでしょ、クリスマスイブ」 形のいい頭を撫でながら 「ちゃんと泊まれる用意、しておいて?」 コックン、と頷く姿は まるで小学生のようだった。 ベッドの上で、何て格好してるんだろう 二人はアラレもない姿をお互いに披露しながら 片方は泣き、片方は笑い 「遠野さん、今さらだけどさ……」 バツが悪そうに告げる。 「服、着替えよっか」 なんて、ダサダサなタイミング。 可笑しくなって笑いをこぼす。 止まらなくなって笑ってるとほっぺたを真っ赤にした 遠野さんにまで伝染。 「ごめん、ちょっと羽目外しすぎた」 やっと笑ったキミを やっと抱き締めたオレは なんて意気地のない男なんだろうと思った。
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