第11章

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仕事をする上で今日がイブだとか 明日がクリスマスだとか、そんなのは関係ない。 まぁ、各種イベントに関連ある職業なんて 腐るほどあるけど ウチはないな。 あぁ、去年は確か、クリスマスに合わせてリオープンする デパートのイベントに首突っ込んでたな、なんて ふと、思ったりもした。 「部長、ちょっといいですか」 「なんだ、新城!」 「くそ忙しい時に申し訳ない、これ 目を通してもらいたいのと ちょっとご意見伺いたい事があります」 何枚かの紙を手渡して それをパラパラと捲りながら 「わかった、13:00からでいいか」 腕にはめた時計に目を落としながら忙しなく 手に持った書類をファイルに挟み オレを見上げた。 「もちろん」 ニコ、と笑ったオレに特に何も返さずに 「預かっとく」 ファイルを揺らしながら 相変わらず渋いそのボイスを響かせた。 ほんと、声優にでもなれんだろ、ってなくらいの ハードボイルドな音だな。 さて、お約束頂いた13時まで2時間弱 ちょっとやる事済ましちゃいましょうかね。 あ、 と、思い出したのは 昨日、結局遠野さんの‘強いて言えば’を聞くのを 忘れたな、と 苦笑いをしながら席へ戻る。 「イブに浮かれてるんですか」 ちっ、と舌打ちしそうなぐらい しゃがれた雰囲気を纏いながら見上げた視線は 岡田さん。 彼女は、四賀の一件で少しだけオレと打ち解けたみたいだ。
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