第11章

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「浮かれてるように見えたら、申し訳ないナイネ」 ふ、と笑うと 「余裕のある男が余裕を無くすところが見てみたいもんですね」 ボー読みセリフを、シャアシャアと目を細めて語る 岡田さんに笑う。 「なに、余裕あるように見える?」 「えー、たっぷりコテコテで」 「ハハハハハハ」 「ほら、そんなところが 嫌みったらしいくらいの余裕ぶり」 そうかな、と机の上のPCにタッチする。 「あ、岡田さん、N社にベイエリアの最終調整 組んでもらうように連絡だしと」 「出しましたぁ」 なんだなんだ、このボー読み。 「木本さんところか」 「折り返して、年明けに選手村構想の決定も仰いでありますぅ」 なに、この反抗的な態度は。 「おか」 「あ、新しい受注きましたから、営業の森さん ‘ヤバイよこれは!’って。 ……資料、そこに差してありますぅ」 呆気に取られて顔をあげる。 いつもは冴えない岡田さんの眼鏡が キラリキラリと光った気がした。 「あ、そう 岡田さん、やっぱり仕事早くて気が利くね」 ちょうど目が合っていて 「有り難う、岡田さん」 負けないぐらいにキラリキラリ、おまけにキラリとした 大サービスの笑顔を喰らわせてやった。 ハッ、とした後、みるみる顔を赤くする目の前の 岡田さん オレは口だけを動かす。 微笑んだまま。 『バーカ』 途端に怒りだす岡田さんの眼鏡はやっぱり いつもみたいに冴えない雰囲気を取り戻していた。
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