第11章

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「三木部長」 「なんだ」 「遠野 卓也という方をご存知ですか」 「ああ」 「その遠野卓也さん、随分昔、大きな事故で亡くなられました 遠野さんが何をなさっていたかも、ご存知ですよね」 チラリ、と見上げたその先は 会議室の天井。 この会議室、思い出すなぁ。 遠野さんに、オモチャを仕掛けて放置した事を。 そういえばその時に三木部長が要注意人物だと 気付いたんだ。 あのとき部長がコソリと喉元のリンゴを揺らしたのは 遠野さんが体調不良ではなく 色艶に濡れていたのが、分かってたからなんだな。 そりゃ、そうだよな。 なんせ、ちょっとした間柄だったんだから。 それくらい、分かって当然か……。 自分の考えを拳を握るのと同じく潰して。 「あの事故は、故意に仕組まれたモノではありませんでした。 が、結果的には1人の不運な人物による 多発事故だと見る事ができます 実際に亡くなったのは4人 重症者数名、その他軽くても怪我をされた方を含めると十数人 大事故ですよね」 「……そうだな」 2人の座った席間隔は 秘密の話をするには若干距離があった。 だけど密集する雰囲気ではなかった。 「遠野卓也さん、名前からも分かるように この会社にいる、建築士の遠野さんの父親です」 「……」 「オレは別にどうこう言って事を荒げるつもりじゃ ないんです 部長、何故この騒ぎに紛れてこんな事をしてるんですか」
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