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自分がデザインした場所を選ぶなんて
どんなに張り切り男なんだ。
今さら考えると
そう、思う。
キザ過ぎて、ビックリする。
だけどこうして
幸せな時間を過ごす事ができるなら
それでいいかも。
「新城さんのお母様、素敵な方ですね」
「そ?本人に言ってやって、喜ぶよ」
右側に沈む遠野さんは自分の母親を知らない。
「お母さん、ってああいう感じなんだ、と」
「遠野さんの伯母さんとは違う?」
「んー、少し違うかなぁ」
「へぇ」
「私、小学校にあがるまで伯父伯母っていうのが
親なんだ、って、みんなそうなんだ、って思ってましたから」
「うん」
「だから、オジオバが、親戚にあたるんだって
知ったのには、ビックリだった」
「だよね」
オレも父親はずっと居ない、と言われてきた。
それがある日突然の発表に少なからず驚いた事を思い出す。
まぁ、もう20過ぎだったから、動揺はなかったけどな。
「だけど、伯父も伯母も、それにおにいちゃんも
みんな私の本当の家族みたいに接してくれました。
たくさん悪い事もして怒られたし」
「……なに、悪い事って……」
「何って、まぁ、普通に」
オレは少し考えてから、遠野さんの方に向き
「普通ってさ、どんなん?
何日も家に帰らないとか
ちょっとしたヤンチャな時期があったとか
あー、ハメ外し過ぎた、とか
後はなんだ?」
「……新城さん」
「なあに?」
「それ、新城さんの事ですよね。
お母様が、チラッとさっき仰ってました」
遠野さんの目が、またイモムシ黒目になり
こっちを睨む。
「余計な事、言いやがって」
「フフフ
今度、写真見せてもらいますから」
「は?」
「約束、しましたし」
「誰と?」
「堺さんと」
変わって、ニコニコと笑う遠野さん。
いつの間にそんなに仲良しになったんだ、と
嬉しい半面。
マジ余計な事すんな、と憎たらしい半面。
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