第13章

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オレは 遠野さんを危険に晒した。 盗聴、されている部屋で専務を巻き込み 部長に吹っ掛けたんだ。 その結果 部長の奇行は遠野さんに向く。 寒さに震えながらあの小さなトイレで 髪を洗わなければならなかった、という事は 部長がそういう行為に及んだ、という証拠。 腹違いのキョウダイだよ、と バレたら嫌だろ、と 泣きながら咽ぶ彼女の喉を突き 顔面に欲をぶちまけた。 想像するのさえ、腹立たしい。 怒りに震えると同時に自分の愚かさに、何度も討たれて ただ、遠野さんを抱き締める事しか出来ない自分に 怒りを覚えた。 だから、腹いせに お前のした事は全部無駄だったんだよ、と 鑑定書を突きつけたんだ。 遠野さんと兄弟姉妹である肯定率、確率は0だった。 「新城さ、ん?」 「……ん」 「泣かないで……」 謝る事は、キミを一層傷つけてしまう。 ごめんな、と言えば言うほど 部長にソウされた、ということを浮き彫りにしてしまう。 「……遠野さん、これ、感動してる、っていうのかな ……嬉しくて、やべ……」 だから、負の感情は隠して 反対のソレに便乗させて 彼女を抱き締めた。 愛しくて 嬉しいのにはかわりない。 「遠野さん、……」 「はい」 「ありがとう」 「……」 腕の中で、コクコクと何度も頷き キュ、とオレを抱くその腕に籠る力に癒される。
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