第14章 幸せ過ぎて……

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穏やかに新しい年を迎えて 今年こそは、目立ったゴタゴタもなく 何事もうまく運ぶように、ああ、それと 遠野さんの健康も、よくよく願いたいものだ。 普段なら、神頼み的なものには興味はないが 今年は別。 まだ神様の前では願ってはいないが。 「……年明けそうそう、お前がいるのは 不愉快だな」 「専務、そんな爽やかな顔で毒を吐かないでください」 「まぁ、致し方ないよ、新城くん」 「そうですね、すみませんお呼び立てして ……うちの母がどうしても、専務も、なんて 我が儘を言ったばかりに」 並んで座る中間シートで、専務とオレは静かに お互いが虚勢を張る。 「遠野さん、ご気分は大丈夫ですか?」 「はい、有り難うございます、堺さん」 前のシートではにこやかな、朗らかな小春日和。 「いやぁ、新城くんのご実家に伺えるなんて 光栄ですねぇ!」 「そうですか、それはよかった」 「おにいちゃん!」 刺々しく言う専務に一喝するのは遠野さん。
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