第14章 幸せ過ぎて……

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キメ細かな泡が表面を覆っている。 一口、含むとほのかな渋みが広がり そして 心地よい甘味が訪れる。 帛紗(フクサ)が打ち返され、スカートの左ウエストに差し込まれたのが視界に入った。 昔は甘味なんて感じた事はなかった。 抹茶は苦いだけの飲み物だと思っていたんだ。 抹茶自体の鮮度もイイのかもしれないが やっぱり点て方がいいんだろう。 のみ口を指先で掠めて、碗の正面を正した。 そこで声がかかる。 「どちらかで、習われたんですか?」 柔らかな声音。 顔を上げてゆっくりと頷く。 「昔、嫌々ながらに飲んでいました」 少しだけ遠慮して微笑んでから 畳の縁外に碗を置き、初めに出された位置へ戻した。 「如何でしたか?」 「とても美味しかったです ごちそうさまでした」 「凄い、新城さん。 ……流石……」 遠野さんがポツリと呟く。 「新城さんのお噂はかねがね伺っています」 「いえ、こちらこそ…… 悠(ハルカ)さんにはいつもお世話になっています」 そして、思い出したように 「二ノ宮先輩にも、もう何年になりますか…… 約10年くらいでしょうか」 「あぁ、そうだった!」 伯母さんは右手で碗を取り左手に乗せてから 膝前に置いた。 流れるような所作で、嫌味のない点前だった。 「ご無沙汰しています」 オレが再び頭を下げる。 「えっ」 横から驚きの一文が飛び込んでくる。 「えぇぇぇぇぇぇ!?」 驚きを隠せない遠野 悠(ハルカ)最近、ちょっとキャラ崩壊。 伯母さんとオレとは顔を見合わせて笑った。
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