第14章 幸せ過ぎて……

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もうちょっとどこか 上擦ったところがあったり セリフに詰まる、とか 噛む、とか なんか新鮮な男子を演出しようぜ なんて、ちっとも思わないが 人様の家のお姫様を拐いにきたどこぞの民が こんなにも落ち着きはらっていられるのは きっと、隣に座る愛しい姫と その姫のナカで眠る、大切な我が子のお陰だと思われる。 ……無責任ではいられない。 「よかったな、悠」 真っ先に口を開いたのは、伯母さんでも 伯父さんでもなく、専務。 専務の口から、ハルカ、と聞いて 少しドキリ、とした。 専務はいつもそう呼ばなかったからだ。 「ジョーはイイ男だよ」 「ホントにね、アンタとエライ違いだわ……」 「まぁ、多少鬼畜な部分もあるけど親父、諦めろ」 そう言って隣にいる 気の抜けた伯父さんの肩をポン、と叩いた。 いや、それ、慰めになってないでしょ。 「おめでとう、悠」 専務は、まともにしてればめちゃめちゃイイ男なんだ。 今日は珍しく獅子のいいところを発動中だった。 「……おにいちゃん、」 「どうぞ悠を、宜しくお願いします」 伯母さんが変わらずにこやかにそう言うと やっと現世に戻ってきた伯父さん。 「新城くん、君は病院に付き添ってくれたのか」 「付き添った、と言っても迎えに行った程度です」 「そうか…… 私も昔ね、一度行った事がある 恥ずかしくて、恥ずかしくてね 君のようには思えなかったよ」 伯父さんが今日、初めてオレにちゃんと目を合わせた 瞬間だった。 「新城くん、悠はね私が言うのもなんだが 本当に非の打ち所がないくらい、出来た娘なんだ だけど、結婚するとなると、ましてや子育てとなると そううまくはいかない」 親父、っていうのは 親っていうのは、こうなんだ。
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