第14章 幸せ過ぎて……

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いつだって心配するのは我が子の事。 遠野さんは姪にあたるけど大事に大事に 育てられたに違いない。 「だからね、新城くん、」 我が子同然か、またはそれ以上か。 可愛らしく、柔らかな遠野さんを見てれば 分かる、事だ。 「悠を助けてやって 悠をたくさん愛してやってください」 「はい、勿論です」 隣で鼻を啜る遠野さんは きっと、また、わき目もふらずに泣きまくるんだろうな、と ポケットからハンカチを取り出して 膝の上に差し出した。 ズズッ、と向かいの席に座る 専務も何故か泣いていて ……嘘だろ。 「あー……言っちゃったぁー」 と、伯父さんが力なく呟き ぐっすん、と鼻を鳴らした。 嗚咽が引き金で 遠野さんは、トイレに駆け込む。 「なんか、ドラマみたいだな」 「そうだね、父さんっ」 そんな父子を見て 伯母さんが大変なんだろうな、と 「あー、うちにも早くお嫁さんこないかしら あぁ、もうこの際お婿さんでもいいかもね、残念だけど」 ふぅ、と溜め息を吐き出して 「さて、ひと段落したところで、オヤツにでも しましょうか 新城さん、甘い物は?」 「大丈夫です」 本当は、遠野さんが食べたいけど 彼女の身体が落ち着くまでは とりあえず、我慢するよ。 フラフラと帰ってきた遠野さんに 「大丈夫?」 声をかけて 今日ここへ連れてきてくれた事に ‘有り難う’ と、心の中で囁いた。
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