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名前を呼ぶのを躊躇っていた。
付き合っていても、どこか他所余所しいところに
不振を感じた事もあった。
愛しく思っていても拭いきれない
心底惚れていても本音がわからない
迷って、でも
惑わされてもいいと
裏切られてもいいと
自由に跳べないように羽を毟ってでも
自分のものにしたかった。
「んじょ、さんっ」
「ん」
「……んぶ、ほしっ」
「全部?」
「もっと、ほし……」
両手を広げて誘い願う。
白いシーツに長い黒髪が放射状に拡がり
シーツよりも白く、所々に朱や紅の花弁を散らした身体を投げ出し
もっと深く繋がりを乞い願うオレの妻は
欲の深い蝶。
まるで蜘蛛の巣に掛かっているみたいだ。
腹の底がギュウと戦慄いた。
雄の性を逆撫でするかの如く、それほど気持ちヨスギテ。
突き上げる事は出来ない。
だから
そこまで侵入するだけ。
それだけなのに
震える。
小さい悲鳴をいくつも撒き散らし
背中も、押さえつけているはずの腰までも浮かすくらいに
到達を果たした悠のその後を追いかけるように
吐き出された夥しい欲。
勝手に揺らぐ腰を押さえられなかった。
自分の意思でダしたモノじゃないあまりの解放感に
今までにないくらいの疲労にみまわれた。
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