第15章 アンバランス

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「はっ、すげー」 ギュッと瞑っていた目を開くと 虚ろな表情の悠。 「……やり過ぎたか、大丈夫?」 瞼を閉じたのが返事なんだ。 そのタイミングでポロリと伝う涙。 「どうした?」 「……幸せ過ぎて……」 いつかも聞いた。 いつかも言ったよな。 「幸せすぎるなんて事はない、これが普通」 「……っ」 「これで当たり前」 彼女はどんな風に虐げられてきたんだろうか。 ある日突然猛威を奮い出す男たちに 怯えて、隷属させられ 「だからね、悠……」 だけど、こんなに澄んだキミのままで 「もっとそう思えるようにしよう」 いてくれて良かった。 抱き締めた温かさは確かに手応えがあった。 やっと手に入れたんだ 離さないし 離れたいと言われてもなお、繋ぎ止めるかもしれない。 この笑顔も、涙も全部何もかもを 守りたい。 そんな風に思っていた。 烏滸がましいだろうか、だから? どうして、放っておいてはくれない? オレと悠が一体何をしたと言うんだ。
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