第16章 紡がれる生命の神秘

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「ね、遠野ちゃん、ひょっとして……」 スピーカー女でも言い淀む事があるんだな、と 内心可笑しくなる。 「はい、ひょっとして、です」 「えっ」 にこり、と微笑んだ悠を指差して パッカリ開いた口を慌てて塞ぎ 悠とオレを見比べるように目で追いながら 「……、あ、ちょ、待ってよ、待って? ね、お、おとうさん、なの??」 オレにボソリ、と囁いた。 「いけませんか?」 「えええっ!ほ、ほ、本気っっ?」 「本気もなにも、ちゃんと覚えがありますから」 これできっと 瞬く間に社内じゅうに拡声されるな、と ちょっと苦笑いをしながら 「まだ、内緒にしといてくださいね 雨宮さん」 一応はストップをかけておく。 ま、だけど、3日後には ほぼ、社内の全員が知ることになったんだけど。 「あー、ほんとだ」 「遠野さん、お腹触らせてー」 8ヶ月くらいになると 急に膨らんだような気がする、と本人が言うように もう服装ではほぼ隠しきれない。 オープンになった関係のお陰でやり易くなった。 なにが? 公共の場でのイチャイチャ。 専務からは苦情が来るが、みんな温かい眼差しを向けてくれる。 ほぼ 無関心になった部長。 ナリを潜めているだけか それとも 何か考えているのか 本当なら産休に入るような時期。 ただ、彼女の持ち場がもう少しでケリがつくから、と 多少の引き継ぎも兼ねて なにより、気分転換も兼ねて 悠自身が出社を望む。
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