第16章 紡がれる生命の神秘

15/35
前へ
/35ページ
次へ
「……何見てるんだろな、綺麗な目だよ 悠に似て」 亘を悠の横に寝かせて首を向かせる。 「な、亘、ママ綺麗だろ やっぱり母親は自慢になるからな めちゃめちゃ自慢できるよ、良かったな」 昨日さ夢を見たよ。 キミがここで身体を起こして座っていた夢。 ‘どうしたの、新城さん’って ちょっと痩せた身体で、顔で微笑んでいた。 「なぁ、悠…… 何が、キミの意識を妨げているの? オレは何をすればいい?」 亘も待ってるんだけどな。 「オレと出会ってからが 一番キミを辛い目に合わせてるんじゃ、ないか?」 伸ばした掌で掠めた頬はちゃんと温かく 少しかさついた唇に気付いて 湿らせた布で拭う。 顔を寄せて、キスをして そこを啄んで 毎日の儀式。 白雪姫だって、物語を代表するプリンセスは キスで目覚めるだろ? 「さ、亘、また明日だ」 首が座っていない、って ほーんと危なっかしいんだな。 だけどオレの掌で、首筋も後頭部も全部危なげなく 掬える。 抱き上げた亘はまた、その悠にそっくりな目にオレを移す。 「悠、また明日な ほら、亘、ママにまたね、って」 悠のお腹にいた頃、きっと何度となく触れ合った 小さな手を握りながら、バイバイをして 気持ちも身体も脳ミソの中でさえも 名残を全開にして、病室を出た。 毎日、離れたくないと思っていた。 だけど、亘が家に帰ってくるようになって ちょっとだけ寂しくなくなったかな。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

299人が本棚に入れています
本棚に追加