第16章 紡がれる生命の神秘

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「サマになってきたじゃない」 「なんだ、ビックリさせんなよ」 「坊っちゃん、お似合いです」 マンションの前でちょうど出くわしたのは 母さんと堺。 「亘、ばーちゃんだよ」 笑うオレを睨むのは母さん。 「やだやだ、ばあちゃん、まぁでもばあちゃんなのよねぇ」 亘を受け取りながら 「亘ちゃん、あらぁ、起きてるのー、かわいぃ」 目尻を下げるのも 俗に言う、赤ちゃん言葉、になるのも 「サマになってきたな」 プッ、と笑った堺。 両家にとって初孫となる亘の存在は 何よりも大きくて、偉大。 「坊っちゃん、例の件なんですが」 「……うん、中で聞く」 孫をあやす母さんの顔はどこまでもデロデロで 見ていて微笑ましい反面、バカらしくて呆れる。 「悠さんの様子はどうでしたか?」 「変わりないよ、元気そうだった」 少しの間の後 「左様ですか」 堺の声がエレベーターの中で反響した。
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