第16章 紡がれる生命の神秘

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「坊っちゃん!」 堺から滅多に出ない音を聞いた。 「ふっ、ぎゃあああああああ」 泣き出したのはもちろん亘。 「ちょっとアンタ達、亘ちゃんがビックリしちゃったじゃない!バカっ」 身体を立てて抱き直して背中をポンポンと叩きながら 「よしよし、煩かった、ビックリしたねぇ」 あやしながら部屋を抜けていく。 口許を覆いながらオレは手洗いへ駆け込んだ。 最近、よくこういう事が起こる。 その時の事が思い出されると突発的に起こる……なに? 発作? 衝動? 抵抗? なんだ、いったい。 ‘達さん、ごめ、なさぃ’ 悠が倒れる前に呟いたのはその一言だけ。 何があったのか分からずに 異変を感じて、連れ込んだ病院。 軽い陣痛が起こっていると言われた 36週と4日の出来事。 意識を薄く開いたのはそのすぐ後。 「いたい、」 と、ポツリ言い、また沈んていく悠の手を握りながら 何があったんだ、と焦りと不安にヤられて直ぐ。 彼女は深い意識の底でも分かるような 凄まじい痛みに襲われた。
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