第16章 紡がれる生命の神秘

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正直にそう伝えた矢先、ブルブルと震える 胸元のスマホ。 「どうぞ」 と、譲られたので目を落としたディスプレイに 脳の血管が開いていくのを感じた。 直ぐ様スライドさせ、耳に当てたそこから 専務の険しい、そして忙しない声が聞こえた。 今の状況を伝えると共に 新しい情報を貰う。 血の気が引くのと同時に 意識もその波に拐われてしまうかと思った。 『堺さんがいらしててな 現場をそのまま保管してくれと言われている』 何も答えなかったオレに 『おい、ジョー!!!聞いてんのか! 悠にはお前しか付いてないんだ、しっかりしろよ!』 怒声は目の前にいるドクターにも しっかり届いていただろう。 電話を切ったオレは少し頭の中を整理する。 どういう事だと。 悠が出社したのは業者との打ち合わせのため息だ。 なぜ、資料室でしかも、脚立を使う必要がある。 おかしいだろ? ついこないだ、電球を替えるのさえ嫌がり いや、もちろん、やりたいと言ってもそんな事はさせないが とにかく、オレの帰りを待つくらいだったのに。 勿論、過るのは一つの仮説。 ただ、何も証拠だってないし、立証だって難しい。 「……どうやら、脚立から 落ちたらしい、と」 「脚立??!」 ドクターの声が、そこで初めてオレの焦りの度合いを超えた。
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