第16章 紡がれる生命の神秘

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出血が甚だしく、輸血を続けた事 多臓器障害が軽度?中等度ある事 そして妊娠期に何もほぼ異常がなかった事から見て 腹部外的外傷があったと考えてほぼ間違いないだろうとの 予測を立てたという。 悠が酷く苦しみ出した時にはもうほぼ子宮口が開いていたという事もあり、即分娩に移り 帝王切開よりも早く胎児を取り出せると考えたのは 現場のドクターの意見が一致したからとの理由だった。 「私と大森の判断です 間違いはなかったと確信しています」 何にせよ、最も危険な場面からは脱出したのはしたが、と ここに来て言葉を濁したドクター。 「処置はできるだけ、可能な限り早く施しました 胎盤の剥がれる部位によっても症状が違ってきます 胎児環境はほぼ問題なかったと思われますが 母体にどれだけの影響が出たかはハッキリとは 分かりません」 ドクターは言い辛い事も、その出で立ち同様に 潔く告げる。 今のオレにとっては、凄まじいくらいの衝迫だったが それでも、ウヤムヤにされるよりもいい。 「そうですか」 返答のないオレに替わって、答えたのは専務。 そう、いつの間にか隣にいた、と気付いたのはこの時だった。 夜中だという事さえも分からなくなるような明るさ 様々な命を繋ぐ器械の音 そして、忙しなく動く白衣や、手術着の影。 無事を見守る患者の家族や関係者。 静かだけれども、賑やかな事がただただ、有り難かった。
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