第16章 紡がれる生命の神秘

30/35
前へ
/35ページ
次へ
「新城さん」 「あぁ、なに?岡田さん」 目の前で申し訳なさそうにこっちを尋ねる岡田さん。 「外線、2番です 木本さんから」 「そう、有り難う」 妻が、入院しています。 そう言って仕事を休むわけにはいかないのが 実状。 じゃなくても、オリンピック関連については 2転3転、さらには白紙に戻ってしまう場合だってある。 選手棟自体については順調だが その他のハード面がめくるめく入れ替わる。 諸外国からの評価も落ちる一方だ。 もう決定してしまった開催国を覆す訳にはいかず 外から中からつっ突かれ委員会どころか、国までもが アタフタしている。 「はい、新城です」 『あ、た、し、よぅ、新城くん ……意外と元気そうね?』 この人がオレにケンカを売るのは最早趣味なんだな。 「元気ですよ?木本さんは暑さのせいで 色んなところが崩れてきてる頃ですか?」 『あんたねぇ、言ってくれるじゃないの ……まぁ、いいわ、先に要件だけ 新城くん、選手棟のGOサインが委員会から出たわよ おめでとう。 後々の、住居計画についても問題なさそうよ 憩いの場、の評価も上々』 「あれは遠野さんの案なので、彼女に言ってやってください」 『……そうね、近いうちに会いに行こうかしら 彼女へのオファーも沢山来ちゃってるからそれも 報告がてらね』 「木本さん」 『なによ』 「ご迷惑おかけしてすみません」 『……あんたに謝られる筋合いはないわよ 遠野ちゃんから直接聞くわ』 木本事務所への移動が決まっていたので ちゃんと悠を迎える準備をしてくれている。 彼女が眠っている間も 着々と時間が進んでいる。 起き上がらない訳がないんだ。 目覚めないでいる要素がない。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

299人が本棚に入れています
本棚に追加