第16章 紡がれる生命の神秘

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きっと、誰かが、それをしたという事実を 必ず掴んでやる、と 堺は静かに言った。 だから悠、早く目を覚まして。 夢の中には亘はいないだろ? その腕でちゃんと抱いて、彼の重さを感じてほしい。 だけど なかなか、そううまくはいかない。 繋がれた機械が今までに無い異常な音を立てたのは 亘が産まれてからちょうどひと月後の事。 心臓の電気信号が乱れ、心拍は急激に低下 大きな音が危険を知らせるのは、悠の 命の危険を知らせている音だった。 けたたましくアラームが点灯を繰り返す。 直ぐに対応に来たのは大森ドクター。 仕切られるカーテン 慌ただしく出入りするナース その景色だけで、目の前が歪み 焦点ど真ん中の消失点へ向かって吸い込まれていく。 一つだけ、良かった、と思える事は オレがいた時だった、って事。 もし、オレの居ない間に、なんて事になったら きっと どんなに辛い思いをしなきゃならないだろうか。
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