第16章 紡がれる生命の神秘

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肺と、肝臓と、内分泌の何かと 普段の半分以下しか機能をしていないと言われていた。 だけどこれは、外傷からくるものだから 回復の見込みがあるんだと聞かされて 現に 検査数値も良くなってきていて 特に、炎症値が格段に下がってきている、と 今日、知らされたばかりだった。 カーテンの隙間から 零れてくる緊迫した空気がこっちに伝わってくる。 足元が冷たく感じるのは オレの血の気が引いているからか。 色んな専門用語が飛び交うのは それだけ、何かの処置を施さなければならない、と いう事だ。 ガン、ガン、とベッドが揺れる。 生きた心地がしない。 闘っているのは、悠、本人なのに。 しっかりしろ、と言われている。 親にも、親戚たちにも、専務にも。 「……はるかっ!!!」 オレが叫んだかどうか、自分で分からない。 その声が届いたかどうかも、分からない。 その直後、引かれていたカーテンが揺れた。 よく見られるシルバーのケースに何本もの針の無い注射器のようなものが転がる。 一人のナースは天井からの輸液を確認して また、一人のナースはベッドの沢山の袋をチェックする。 ピッ、ピッと等間隔に刻む最近聞き慣れた音が 安心をもたらすのは それが悠が生きている証だからだ。
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