第17章 悠……

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車の中はまだそれほど温度の上昇はなかった。 日陰を狙って停めたのが正解。 まぁ、朝イチだし見舞いもいない。 ICUに関してはちょっとした例外もあって。 だけど、病院へ入るのには物凄くセキュリティが厳しくなっていた。 「じゃあ、マンションでいい?」 「はい」 「車でしょ?」 「そうです」 「昼から母さん運ぶんだもんな?」 最近、母さんはベビーシッターとして 自らオレのところに泊まり込んでくれている。 仕事の間は面倒を見てくれていた。 もちろん、悠のおばさんも週に2度は顔を出してくれて オレが帰ると、宴会が始まっている事だって 少なくはなかった。 悠の意識が回復しなかった頃は 有り難かった。 賑やかにしてくれたお陰で 少し、いや、だいぶ気が紛れたからな。 「亘、着いたぞー」 チャイルドシートから亘を抱き上げても この子はビクともせずに眠りこけていた。 あぁ、かわいいね。 なんて、可愛いんだろうか。 自然と緩む頬。 お前にも随分癒されたな。 「坊っちゃん鞄お持ちします」 後ろから声がかかって亘セットがひょいと引き抜かれた。 「坊っちゃん」 「うん?」 「どうしましょうか」 「……いきなり来るね」 「悠さんには何もお聞きにならないつもりですか?」 「……起きたばっかりでしょう、悠ちゃん」 お前も酷い事言うね? それともなに? 「悠に、どうして脚立に登る羽目になったか 直ぐにでも聞いた方がいい?堺……」
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